【超古典】 第1章(31)
◆ 今回の重要単語
121 すくせ
122 たまのを
123 あくがる
124 かりそめなり
「叩いてみなよ」
ドラムチェアに座った瞳に、私は顎をしゃくった。
瞳が、ピンクのリュックからスティックを取り出した。
新しいようで、少し使い込んだ照りがある。
淳一と瞳は一度、頷きあった。
瞳がスティックを叩いてカウントする。
四拍目の裏で、クラッシュシンバルが弾けた。
淳一の歪んだ♪グリッサンドが、追いかける。
『すくせ オブ ユー(君の前世からの因縁)』のイントロだ。
16 ビートの硬いフロアタムが響き始める。
私の知っていた瞳は消えた。
ハイハットのシャープな響きが体中の細胞を目覚めさせ
た。バスドラのリズムが魂の芯に届くようだ。瞳は、細い
身体を跳ねるように舞わせて、ビートを刻んでいった。
わずかに走りぎみのリズムがかえって、気持ちをかきたてる。
かりそめに(ついちょっと軽い気持ちで)ドラムを叩い
てみたというのではない。瞳の玉の緒が、あくがれ出でて
(命が、身体を離れて)ビートを刻んでいるようだ。
私は、涙が溢れそうになった。
思わずマイクを握って、シャウトした。
♪ グリッサンド…… 弦を押さえた指を滑らせて、音程を変化させてい
く奏法
⇒本書71ページ
(今回の重要単語の詳しい説明は、本書の70ページにあります。)
