【超古典】 第1章(30)
◆ 今回の重要単語
117 さらに
118 むげ
119 わりなし
120 せめて
信号は青に変わったが、四人とも足を止めていた。
私は小さく叫んだ。
「さらにこそ信ぜられね(まったく信じられない)」
一つ言葉にすると、もう止まらなかった。
「無下にわりなし(ひどく訳が分からない)。ドラムなどえ
叩かず(ドラムなんて叩けない)。さやうなること、つゆ知
らず(そんなこと、少しも知らない)。せめてさそひしか*
(無理に誘ったのか)。無下のことなり(最低・最悪の
とんでもないことだ)」
淳一が首を振った。
「愛こそ、無下のことを言へ(愛こそ、ひどいことを言う)。
瞳ちゃんなりに考えたことだ」
私は、淳一を睨んだ。涙がこぼれそうだった。
「瞳のドラムなんて、さらにあり得ず(まったくあり得ない)。
をこがましきことなり(馬鹿らしいことだ)」
「瞳ちゃんの、ドラム、聴いてから言えよ」
淳一が信号の先を見て言った。点滅し始めた歩行者信号
の向こうで、瞳が立っているのが見えた。
*しか…… 過去の助動詞「き」の連体形「し」に疑問の係助詞「か」
がつづいたもの。「〜たのか」
⇒本書69ページ
(今回の重要単語の詳しい説明は、本書の68ページにあります。)
